【Astro Advent Calendar12/4】南アフリカでクリスマスを過ごした話-前編

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こんにちは、12/4のアドベントカレンダーを担当します、うまです。

突然ですが南アフリカという国に行ったことありますか?

なんと、私は

あります

南アフリカの場所。遠い国ですね。

南アフリカと聞いてどのようなイメージが浮かぶでしょうか。
ラグビーが強いだとか、首都はちょっと治安が悪いって聞いたことがあるだとか、少なくとも私は訪問前はフワッとした印象しか持っていませんでした。遠い国ですし、似たような方が多いのではないかと思います。
Googleの検索結果によれば南アフリカは日本からの直行便はなく、渡航するにはアジア、中東、もしくはヨーロッパを経由する必要がある模様。南アフリカ第二の都市・ケープタウンまでの所用時間は短くても29時間……遠いです。

Googleで「成田からケープタウン」と検索した結果。遠い。

そもそもこの「アストロアドベントカレンダー」の記事でなぜ南アフリカの話をいきなり始めたのか、ご説明させていただきます。天文に関係する記事を投稿する企画の一つですから、何かしら天文学に関わりのある内容のはずだというのはお気づきでしょう。前情報として私の身の上話から始めさせていただきます。

私は現在ごくごく普通の社会人をしておりますが、学生の頃は天文学を専攻しており、「太陽系外惑星」や「低質量天体」(褐色矮星や惑星質量天体と呼ばれる種類の天体)の勉強をしていました。
天文学の研究は雑に分けると「観測的研究」「理論的研究」のいずれかで、私の場合は前者でした。その名の通り観測を行う必要があるのですが、天体の観測はそう簡単には行えません。適しているのは、街明かりが少なく、晴れの頻度が高く、湿度が低く、空が開けていて、そしてある程度アクセスの良い場所。そのような条件を満たす土地は世界でも決して多くはなく、「観測スポット」は自ずと限られてきます。有名どころでは、ハワイのハワイ島にあるマウナケア山などがあります。日本も「すばる望遠鏡」を設置して運用しており、日々(といっても夜ですが)観測が行われています。

ただ、当時の私のような学生が、いきなりすばる望遠鏡のような大きくて最先端の装置を備える望遠鏡を気軽に使うことは難しいです。と言うのも望遠鏡での観測は公募制となっており、申込書を書いて審査を通った観測のみが遂行されるという仕組みだからです。学生などが観測の練習や修士論文のテーマのために使える望遠鏡は「そこまで最先端ではないが結構良いデータの取れるもの」になるわけで、その一つがなんと南アフリカにあるのです。

ということで今回は、ひねりも何もなく私の過去の南アフリカ滞在の回想をつらつらと書いていく、そんな記事です。暇で暇で仕方がないという方はぜひお付き合いくださいね。

※なお、本記事の写真はすべて「Googleマップ」から引用しております。当時の私のカメラの画像データは全てどこかに行ってしまいました。

ケープタウンまでの旅

私が南アフリカに行ったのは今からちょうど9年前の2013年12月のことです。もう9年も経っていたということに、かなり衝撃を受けています。淡々と書いていますが、5-6年前だろうと思っていました。結構びっくりしています。
当時は惑星質量天体や褐色矮星と呼ばれる天体の勉強をしていたというのは先に述べた通りですが、まさにそのような天体の観測データを自分で取得するための出張でした。
望遠鏡は日本のとある大学が所有するものですが、現地に観測スタッフなどはおらず、先輩から代々口伝および現場で教えてもらうようなスタイルでした。今思えば相当スリリングです。
当時修士一年だった私は、ひとつ上の学年の先輩に付き添いをしてもらい、最初の一週間は先輩と共に観測をし、後半一週間は一人で滞在するというスケジュールでした。

さて、先ほど行程表をご覧いただいた通り、南アフリカまではとにかく時間がかかります。行き先はケープタウン、乗り継ぎが2回です。
成田を出発してシンガポールに着くまでが8時間、そして乗り継ぎのためにシンガポールのチャンギ空港で8時間も時間を潰すこととなりました。幸い私は当時ニンテンドーDSでポケモンを嗜んでおりましたので、卵の孵化作業をするなどして乗り継ぎの待ち時間を過ごしました。いや、本当に8時間もポケモンだけで過ごしたのでしょうか……記憶が曖昧です。それから再びヨハネスブルク行きの飛行機に12-13時間乗り、ヨハネスブルクで1時間ほど同じ機体内で乗り継ぎ待ちをし、ようやくその後2時間ほどでケープタウンに到着です。
やはりこの長いフライトでも私は卵の孵化作業に勤しみ、そのおかげでボックスがイーブイまみれになったことをよく覚えています。

ケープタウンに到着して真っ先に私がやったこと、それは南アフリカ用の変なプラグを買うことでした。3本の丸いピンがついているタイプで、日本でなかなか売っておらず現地の空港で買うしかないと先輩がアドバイスをくれたのです。
なおこの変なプラグは今でも私の手元にあり、完全にゴミ旅の思い出の一品です。

ケープタウンの空港には南アフリカ天文台のお迎えのワゴンに来てくれます。運転手さんはもちろん現地の方。公用語は幸い英語なのですが、私はまともに英語を話すことができなかったので、車内は気まずい無言の時間が流れました。

お迎えの車が向かうのは望遠鏡ではなく、街中にある南アフリカ天文台の研究施設でした。そこで施設から望遠鏡のある場所までの送迎車に乗るのですが、なんとその送迎は週に一回。そのタイミングまで施設で2泊ほど宿泊をして時間を潰す必要がありました。
施設からは南アフリカの名物「テーブルマウンテン」がたいへんよく見えて初日は感激したのですが、そのうち景色の一部となって「あるのが当たり前」になっていました。

宿泊施設は部屋が用意されているのみで、食事は自分で用意する必要があります。ただ、現地のスーパーマーケットは少し遠いのと私のような軟弱な日本人が一人で行くとカモが歩いているだけに見える可能性もあり、基本的には日本から持って行ったサトウのご飯とカップ味噌汁で飢えを凌ぎました。一度だけ近所のスーパーマーケットに先輩が連れていってくれて、そこでペンネとタンドリーチキンの冷凍食品を購入しました。

ペンネはそこそこ普通に美味しい味で、日本のファミレスで食べるようなものと変わらない美味しさでした。タンドリーチキンはこの時は食べずに、宿泊施設の共同の冷凍庫に置いておくことにしました。じつは観測後にまたこの施設に戻ってきて飛行機までの待ち日数を潰す必要があるのですが、その日付がちょうど12/25だったのです。異国で一人寂しくクリスマスを過ごす約2週間後の自分にご褒美を残していきました。

2日ほどこの虚無の時間を過ごし、いよいよ望遠鏡への送迎の車が出る日。10人程度が乗れる小さめのバンに、私と先輩以外にもさまざまな国の人が乗り込みました。ドナドナされる子牛、さもあらん。さようなら都会。2週間後に会おう、私の冷凍タンドリーチキン。

観測所への旅

さて、望遠鏡があるのは、ケープタウン近郊(出展:天文学辞典)の「サザーランド」という街に程近い、その名も「サザーランド天体観測所」と呼ばれる場所です。
この場所、南アフリカ公式の観光紹介webサイトにも掲載されているようです。

南アフリカ観光局


まずは地図上で場所を確認してみましょう。

天文学辞典によれば、ケープタウン近郊とのことでしたね。
近郊……

グーグルマップ、ケープタウン市街地付近

近郊……

グーグルマップ、ケープタウンから100km程度まで

近郊……?

グーグルマップ、ケープタウンから300km程度まで

き、近郊!?

東京-名古屋間くらいでした!!! 遠いですね!!!


さて、実はサザーランド天体観測所には私たちが使用する予定だった望遠鏡だけでなく、世界各国のさまざまな望遠鏡が集まっています。サザーランド天体観測所のみならず例えばハワイやスペインのカナリア諸島など、世界各国にある観測スポットは基本的に多数の国の望遠鏡が集まる群生地と化しています。
そんなこともあり、ドナドナカーには他の望遠鏡の観測者たちも乗り込んでいたというわけです。
ケープタウンの南アフリカ天文台を出発し、なぜか個人のお家を回って天文学者っぽい方を拾って、さあ楽しい車の旅の始まり。

350kmほどもあるので流石に暇だろうと思いましたが、これまで見たことのない景色に思いのほか心が踊りまくりました。
市街地をしばらく走るとそのうち広大な山々のエリアに突入します。日本でこんな風景は見たことがなく、とんでもない土地に来たんだなと今更ながら実感が湧いてきました。日本に帰れるのだろうか。

平地から山地に入る付近
しばらくこんな感じの山地をひたすら走ります

RPGの高地のような場所を抜けると、畑が大量に広がります。なんと一面ワイン用の葡萄の栽培地。どうやら南アフリカはワインの産地としても有名だったようです。お酒に一切興味のない私は全く知りませんでした。
その後、ダチョウのような巨大な鳥を飼っている牧場を見かけたり羊の群れを見かけたりと、しばらくは慣れない景色を楽しんでいたのですが、そのうち一面「荒地」のような状態がひたすらずーーーーーっと続くようになります。流石に暇です。

荒地のような、とにかく山もなく木もほとんど生えていない殺風景な道が続く

もうこれ以上の景色のバリエーションはないので、サザーランド天体観測所に着いたことにしましょう。

サザーランド天体観測所の施設

次回、いざ観測開始

さて、今日の更新ではここまでです。
勿体ぶる必要はないのですが現時点で4,000字程度になっており、これはさすがに読んでいるのも疲れるのではないでしょうか。読んでくださっている方はいらっしゃるのでしょうか。


異国の地・サザーランドでの天体観測は!? 冷凍庫にあるクリスマス用のタンドリーチキンは!? 
次回の更新「南アフリカでクリスマスを過ごした話-後編」ご期待ください。

お付き合いいただき、ありがとうございました!

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