この季節といえばにぎやかな商戦に巻き込まれ、
どうしても出費がかさむことでしょう。やだなあ。
…そんな時、ふと思い出すのです。
「貴金属…金、銀、プラチナとかって星が作るんじゃなかったっけ」
赤い帽子やらオーバサイズの靴下のことは世間に任せておいて、我々の方は現実的アストロチックな話から、宇宙貴金属で最強の資産形成とポートフォリオを考えていきましょう。
今更ながらに思うけど、r-process とか矮小銀河とかやってた同期の話をもっとちゃんと聞いておくべきだった…!
貴金属はr-process
貴金属は、r-process (r過程) で作られます。
我々の(宇宙)資産形成のバイブルである天文学辞典 (出典1.) 1によると、「速い(rapid)中性子捕獲とそれに続くベータ崩壊により、核図表で中性子過剰領域にある鉄属より重い元素を形成する過程」とあります。核図表については良くわかりませんが、専門家の方にとってより見やすい周期表のようなもののようです。
我々は鉄での資産形成は考えていないので、とにかくr-processで成金を目指そう!という作戦がよさそうです。
中性子星か超新星か
宇宙成金を目指し、金・銀・プラチナでギラギラするためにはr-processを探せばよいことが分かりました。
引き続き我々の(宇宙)資産形成のバイブルである天文学辞典(出典1.)によると、「そのような場所として長らく重力崩壊型の超新星爆発と中性子星同士の合体で発生するキロノバが有力視されてきた」とあります。さぁどうしましょう。文字列だけだと超新星にいきそうなんですよね。(なんの記憶違いか、かくなる私も超新星でできると思っていました…)
そんなあなたは、出典2の記事(2014年7月1日)2をご覧になると良いでしょう。
もしも私が超新星で成金になれると信じ、大きい銀河とか広くて探すの大変だからといってりゅうこつ座銀河のようなとても小さい矮小銀河にばかり旅に出ていたら、そこは鉄・鉄・鉄、鉄パラダイス。細かいことは割愛しますが、超新星は起きて、中性子星の合体がほぼ起きないくらいの小さい銀河から、超新星も、中性子星の合体も結構おきるくらいの大きい銀河を、鉄の濃度(r-processがなくても生成される元素)とユーロピウム(r-processで生成される元素)の濃度上で比べてみると、中性子星の合体がほぼ起きないくらいの小さい銀河では、銀河の大きさに従って鉄の濃度は増えるのにユーロピウムが増えていない…
反対に、ある一定の大きさ以上の、中性子星の合体も結構おきるくらいの大きい銀河を並べると、きちんとサイズに従って鉄の濃度もユーロピウムの濃度も増える…
超新星では r-process は起きていないのではないか?という観測結果が示されているのです。
(なんとも…私が星の勉強もしていたのは2012年頃ですから、言い訳はできるとしても衝撃的結果…)(よっぽど遠方銀河の話以外聞いてなかったんだなということも反省。)
そして決定的なできごとが、2017年8月17日に銀河NGC4993で発生した中性子星の合体で起きたキロノバです。このキロノバは、重力波検出の5つ目の例であるとともに、全ての波長の電磁波で観測されたものであり、ほぼ直後に行われた近赤外線の観測結果は、金、銀、プラチナなどのr過程元素の存在を直接的に示すものでした。
うーむ、まだ天文学やっていた頃だなあ。参った参った。中性子星の合体だったんですねぇ…。
こうして、このGW170817とよばれる中性子星の合体では、地球1万個分の貴金属が含まれていることがわかったそうです(出典3、ただし貴金属色々含んだ全部みたいですが)3。
全地球上には5万tの金があるといわるので、1g 7000円として計算してみると
1地球の金 (1地球金) をゲット=7000 x 1000 x 1000 x 50000 / 10^12 = (350兆円)
なので、比較的大きめの銀河にいき、いまにもぶつかりそうな中性子星連星で待機し、仮に放出される全てのr-process元素を回収できれば、350兆円 x 1万 = 350京円…になるかもしれない!
ただし、中性子星の衝突で r-process 元素は数十%以上の光速でじぐざぐに進んでいく (出典2)らしいので、どうやって吹っ飛んでいった金、銀、プラチナを捕まえるのか、ここは技術開発が必要そうです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
これですっかりあなたも宇宙で資産形成できるイメージが膨らんだではないでしょうか。
12月を騒がす地球上の商用イベントなど一切脇見もくれず、我々としては中性子星の合体でぶっ飛んでいった金、銀、プラチナの捕まえ方を考えていきましょう。
※ なお、掲載されている事項は、一切の宇宙貴金属の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、最終的な決定はご自身の判断でなさるようにお願いします。
出典1: https://astro-dic.jp/r-process/
出典2: https://www.nao.ac.jp/news/science/2014/20140701-neutronstar.html
出典3: https://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/c1710_2.html
執筆者紹介
執筆:@uy01ak
この記事は Astro Advent Calendarの企画記事です
コメント