【Astro Advent Calendar12/25】キラめきに魅せられて(おさむ)

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みなさま、メリークリスマス!

くぅ〜疲れましたw これにて天文アドベントカレンダー2021完走です!

これが最終日の記事になると予期していなかったのですが←

ご寄稿くださった関係者の皆様、盛り上げてくださった読者の皆様ほんとうにありがとうございました。(後日改めて、Einstein’s Crossよりお礼申し上げます。)

以下、最後の記事をどぞ1

本日は「キラめきに魅せられて」というタイトルで、「天文学で使う光の物理量」「スタァライトの楽曲タイトルに使われる”キラめき”の形容詞」をご紹介します。

光の物理量

天文学は、まず第一に「光」を観測します2。観測するということは、観て、量や性質を測り、数値化するということです。そのために天文学では、様々なものさし(物理量)が定義されています。3

これから紹介するのは、私が従事していた可視赤外天文学でよく使われるものさしです。

可視光線(Visible)・赤外線(Infrared)は、以下のイラストの示すように真ん中の虹色のあたりとその1個左くらいまでの光を興味の対象としています。そのため、他の波長(電波、紫外線、X線、ガンマ線、その他のメッセンジャー)の人々の間では一般的でないかもしれません。先んじてお詫び申し上げます。

©NASA, “Introduction to Electromagnetic Spectrum” より

Magnitude

Magnitude(等級)は、1等星4などと言うように日常で一番使う単位ですね。明るいほど数値が小さくなるという性質に面食らった記憶があります。小学校の理科などで最も早く覚える単位だと思います。(高校地学でも選択しない限り、他の天文の単位に触れる機会はないでしょう。)

100倍明るくなると5等級下がるという対数の性質を持っており、1, 2, 3, …といった整数だけじゃなく小数で表されることもあります。たとえばこいぬ座のプロキオンは 0.37 等5です。もっと明るくなるとマイナスにもなり、おおいぬ座のシリウスは -1.46 等6、太陽ともなると -26.7 等7もあります!

そりゃあ太陽は近いんだからズルいよね、となるかもしれません(ズルくはないが)。上で説明した等級は「見かけの等級(実視等級)」のことで、より公平な「絶対等級(Absolute magnitude)」という単位も存在します。こちらは「決められた距離8から見たときの星の明るさ」です。このものさしを使うと太陽は 4.82 等となります。この数字を以って「太陽は宇宙の中では暗い部類の星である」と言われたりします。

星の等級は肉眼で観測していた頃からの古い歴史を持ちます。一番明るい星を1等とし、肉眼で見える限界の暗い星を6等として、6段階に分けるように定義されました。その後の望遠鏡の発明や写真乾板による観測で、より暗い星に7, 8, と等級を割り当てたり、明るさと等級が対数的な関係にあることが明らかになってきた…というストーリーです。等級が対数的になっているのは、人間の目が光量に対して対数的に反応するためなのです。

また、等級を語るときには「どの色の光を測るか」が大切です。たいていは決められたバンド(波長の範囲)で測定します。話し出すとめちゃくちゃ長いしよく分からないので割愛。

……と語ってまいりましたが、等級に関しては「物理量」ではなかったかもしれません。ここから物理ぽくなっていきます。

Luminosity

「luminous」の名詞形で明るさ、ですね。語幹のlum-は光を表し、「イルミネーション」「ルミナリエ」「ルミネ」「ルーメン」ともつながっています。

さて、luminosity(または光度)は「天体が単位時間当たりに放射するエネルギー」を指す物理量で、馴染みある単位では W(ワット)と同じ次元で、「電球の明るさ」と「星の明るさ」が似た感覚なので覚えやすいです。天文学でよく使うcgs単位系9での次元は erg/s です。

スペクトル分類に用いられるHR図(質量と光度の関係)など、光度は星を調べる上で重要な性質があります。

光の物理量は、基本的にこの「時間当たりのエネルギー」を「単位○○あたりの」「単位□□あたりの」…と割っていったものになっています。いきなりかっ飛ばしていきますよ

Specific Intensity / Brightness

intensity(強さ)です。luminosityに比べてオシャレさが皆無ですね。

brightnessの方はザ・明るさ!という言葉です。

specific intensity(または放射強度)は、天文学辞典によると

特定方向へ伝播する電磁波が、単位立体角、単位周波数、単位面積、単位時間当たりに輸送するエネルギー

天文学辞典「放射強度」より引用

ということで、luminosityに比べて「立体角」「周波数」「面積」あたりの量になっています。

この記事では、「なぜこれで割っておきたいか?」という気持ちを知っていただきたいと思います。

luminosityは「星そのものの明るさ」でした。このうち、観測する「目」や「望遠鏡のレンズ」に入ってくる光の量はどれだけでしょうか?……それは目やレンズの大きさに比例しますよね。したがって、「受け取る面積あたりの光量」という単位が必要です。

次に、星には赤や白、青などいろんな色がありますが、「この色の光がどれくらいの量か」は知りたくなるはずです。赤の光だけ測りたいとしましょう。望遠鏡につけるフィルターの波長幅が 600 – 700 nmだったら、100 nm分の光が入ってきます。このフィルターがもし波長幅 600 – 620 nmしかなかったら、おそらくさっきの 20 %くらいになってしまいます。したがって、「波長、または周波数あたりの光量」という単位が必要です。(波長で例を出してしまいましたがあまり変わりません。許して。)(というか、可視赤外では「単位波長当たり」を使うことが多いですね。周波数でやるのはむしろ電波の文化かと思います。)

最後に「立体角」です。立体角とは「見かけの大きさ」のことです。たとえば部屋の照明に向かって手をかざし、半分隠してみましょう。すると目に入る光の量は半分になるはずです。つまり光の量は「見かけの大きさ」に比例するので、「立体角あたりの光量」という単位も必要なのです。小さい頃に懐中電灯を目に当てて照らしたりしませんでしたか?めっちゃ眩しいですよね。でも遠くからだとそんなに眩しくない。あれは「立体角」のしわざです。遠近法もとどのつまりは立体角のことです。

これら3つの「単位〇〇あたり」が全部盛りになった物理量がspecific intensityです。天文学でたぶん一番基礎的な量で、興味深い性質を持った「光のマクロなプロフィール」と言えるでしょう。10

specific intensityでイメージするのは「LED」と「蛍光灯」の違いです。LEDは小さいのに1粒1粒が強く光っていますよね?あれはspecific intensityが大きいからです。蛍光灯は大きいけれど、1点1点の明るさはそんなに強くないです。

そういうふうに考えると「specificなintensity」って言葉がしっくりきますね!

Energy flux

fluxは「流量」という意味の単語です。

energy fluxは「単位面積当たり、単位時間当たりに面を通過するエネルギー」の物理量です。specific intensityから見ると立体角と周波数で積分した量11、luminosityから見れば単位面積あたりで割った量になります。

ところでこれを書いていて、私が以前出版した論文でenergy fluxのさらに単位波長当たりの量をフラックスと呼んでたような覚えがあって震えています。確認するのこわい…… これなんて物理量でしたっけ(匙を投げるな)。

スタァライトの”キラめき”

気持ちを切り替えていきましょう。

舞台版スタァライトの楽曲は、舞台脚本家の三浦香さんによって作詞されています12。三浦さんの曲のタイトルに使われる「キラめきの英語」が素敵なんですよね……!3曲あるのでご紹介します。

“Glittering” Stars

舞台公演Blu-ray 特典スペシャルCD試聴動画

3作ある舞台のすべてでカーテンコール曲として使われている名曲。glitteringの意味を調べると

shining brightly with many small flashes of light

Oxford Learner’s Dictionaries, “glittering” より引用

たくさんの小さな光がキラキラと輝いている様子、でしょうか。まさに舞台少女ですね!

specific intensityが強そうです。

Green “Dazzling” Light

Green Dazzling Light

舞台2作目シングルのB面曲13。ライブパートでこれを聴くと泣いちゃう。。

「緑色の星はない」という記事がアドベントカレンダーにありましたが、こちらの「Green Dazzling Light」が指すのは星ではなく、(劇場にある)非常灯の緑色の光なんです。

名残り消えたこの劇場
灯る非常灯切ない(別れ切ない)
またね すぐにここへ戻るよ
Green Dazzling Light

スタァライト九九組「99 Illusion!」収録、作詞:三浦香・月蝕會議、作曲:月蝕會議、歌唱:スタァライト九九組「Green Dazzling Light」より引用

dazzlingとは

so bright that you cannot see for a short time

Oxford Learner’s Dictionaries, “dazzling” より引用

と説明されています。非常灯ってそんなに眩しかったっけ…?(いや眩しくない)

これはきっと、舞台が終わった後の高揚感や余韻といったものを晴らしてしまう、非情な非常灯への切なさが余計に「Dazzling」に感じさせているのでしょう。

(余談ですが、推しの露崎まひるちゃんのカラーは緑色です。)

“Bright”!Light!

Bright!Light!

だから Bright!Light!
もっと照らしてよ
テンションな少女
曇り空教えてる
晴れない日はない まだまだ!

スタァライト九九組「百色リメイン」収録、作詞:三浦香・エンドウ.、作曲:Billy、歌唱:スタァライト九九組「Bright!Light!」より引用

舞台2作目の再演時のこれまたB面曲。

今度は曲調からも歌詞からもBrightな感じがしますね!

full of light; shining strongly
bright light/sunshine
a bright room
Her eyes were bright with tears.
a bright morning (= with the sun shining)
All of these stars are bigger and brighter than our sun.

Oxford Learner’s Dictionaries, “bright” より引用

オアア…… 真昼の星になりたいなじゃん……😭😭😭14

おわりに

細かいところが気になる文章が長くなるのが僕の悪い癖です。妙ですねぇ……

本記事では「光」に焦点をおいて、天文学で使う物理量とスタァライトの楽曲名のお話を自由にしてまいりました。これを読んでくださった皆様はもう、4℃のスペクトルの次元もわかるようになったし、スタァライトのオタクになったことと思います。

そしてきっと、この文章は「光」を介して目で読んでくださったことでしょう。もう遅いけど画面から離れて部屋を明るくして観てくださいね。

冬至を過ぎて北半球ではいっそう寒くなってまいりました。皆様お体に気をつけて良いお年をお迎えください。

あなたの新しい一年が、「光」で満ち溢れた素敵なものになりますように。

最後に一つだけよろしいですか?レヴュースタァライトの準ヒロイン、三森すずこさん演じるそのキャラクターの名前が神楽「ひかり」なのです。妙ですねぇ……

参考文献

NASA, “Introduction to Electromagnetic Spectrum”
天文学辞典「放射強度」
Oxford Learner’s Dictionaries
Wikipedia
スタァライトチャンネル – YouTube
スタァライト九九組 – YouTube
Blu-ray「少女☆歌劇 レヴュースタァライト-The LIVE-#1 revival」BRMM-10109(Glittering Stars収録)
スタァライト九九組「99 ILLUSION!」BRMM-10151(Green Dazzling Light収録)
スタァライト九九組「百色リメイン」BRMM-10186(Bright!Light!収録)

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