【Astro Advent Calendar 12/23】「宇宙の音を聴く」タイプのサイエンスカフェがしたい妄想

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こんにちは。もやしです。去年に引き続き、宇宙と音楽のお話をしますのでよろしければお付き合いください!

「宇宙の音」を聴く

皆さんは、「宇宙の音」を聞いたことがありますか?

上の動画は、NASAが行っている「ソニフィケーションプロジェクト」の一つ。「Westerlund 2」という天体からの光を音にしたものです。観測に使った望遠鏡はハッブル宇宙望遠鏡(緑と青)やX線天文衛星チャンドラ(紫色)。音の高さが光の波長(周波数)、音の大きさが光の大きさに対応しています。何だか神秘的で美しい響きですよね。

宇宙空間は音を伝える媒質がないため、実際にこのような音が宇宙空間で鳴っているわけではありませんが、ワクワクします。

NASAのソニフィケーションプロジェクトでは、これ以外にもさまざまな天体を音に変換しています。いろんな天体の音を聴いてみましょう。→https://www.nasa.gov/content/explore-from-space-to-sound

データを音にする「ソニフィケーション」

ところで、先程の段落でさらっと登場したソニフィケーション(可聴化)。これは簡単に言うと「データを“聞こえるようにする”こと」です。

ニュースなどでも数的なデータをグラフにして紹介することがありますが、それも一種の可視化です。天体を観測するときも、星からの光をデータにしてから絵を作りますから可視化の一つだといえそうです。

「可聴化」という言葉はなんだか聞き慣れませんが、実は私たちの生活にも使われているものです。放射線量を測定する「ガイガーカウンター」や、心拍に合わせて音が鳴る「心電図カウンター」などのツールは、得られたデータを音にすることで放射線の変化や心拍の乱れなどの生じた変化を気づきやすくしているものです。

それでは、データを絵にしたり音にしたりすることで、どのようなことがわかるのでしょうか。Hermann によると可聴化では「音は入力データの客観的な特性や関係性を反映」しており、「データがどのように音の変化を引き起こすかは明確に定義されている」としています。(引用:寺 澤 洋 子、データ可聴化と音デザイン」、日本音響学会誌 74 巻 11 号(2018),pp. 618–623)

データを音にすることによって、「データを見ただけではわからない関係性が見えてくる可能性がある」と言えそうです。

音で宇宙のデータ研究!

ブラウザバックされないうちそろそろ星の話に戻ります。

よくウェブサイトなどで見かける美しい天体の写真。一眼見ただけではわかりませんが、これらの写真の観測データの中には光の波長や大きさ、そして時間などの膨大なデータが含まれています。これらのデータは複雑に絡み合っていて、その中から相関を見つけ出すのはとっても大変そうです。これらを音で聴くことによってデータの見え方が変わり、面白い発見をすることもできるかもしれません。光の強さが時間によって変わるパルサーなどの天体の観測は音データにするのに向いていそうです。

Zanella et al. 2022によると、軽微な違いに気が付く力も視覚より聴覚の方が優れており、近年は可聴化が絡むプロジェクトも増えてきているようです。可聴化の技術が進めば、視覚に障害のある方でも天文研究ができそうです。天体からの光を音楽にするだけでも超楽しいのに、研究でも有用なんてすごく楽しい。

このような宇宙を音にする方法は教育やアウトリーチでも使われています。宇野らによる「宇宙科学データ可聴化プロジェクト」では、「X線天文衛星「あすか」や「すざく」の観測データを時刻に沿って可視化・可聴化した」そうで、「観測データを可視化したポスター展示よりも、動画や音を交えたインタラクティブな展示の方が興味を持ってもらいやすく、インパクトが大きくなる」とのこと。天体データを可聴化することで、子供から大人まで、さまざまな人に関心を持ってもらえるのではないでしょうか。

音で広げる宇宙の可能性

この記事では、宇宙を音で聴いてみるプロジェクトを紹介しました。星からの光を音にすると、同じ天体でもまた違って見えますね。データを音にする手法はわたしたちの身近でもよく使われているようです。

NASAのプロジェクトの動画もぜひ覗いてみてくださいね。https://www.nasa.gov/content/explore-from-space-to-sound

ところで、今回紹介した「宇宙×可聴化」でサイエンスカフェができたらいいなーとここ数年考えています。ご興味のある同業者の皆様はぜひお声がけください(迫真)。

執筆者紹介

執筆:もやし

URL:https://einstein-cross.com/

この記事はAstro Advent Calendar 2022の企画記事です

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