【Astro Advent Calendar12/18】宇宙でゴールドラッシュは起きるか?(ムル)

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こんばんは。普段は星にどのような元素がどれだけ含まれるか(=星の元素組成)を研究しているムルです。今回はとても希少な元素「金」に注目して、身近なところから少し変わった元素組成1を持つ星の話までしていきたいと思います。金、みんな手に入れられるならほしいですよね?宇宙で一攫千金を狙う人にとっては必読の記事かもしれません。

地球の元素組成

まずは身近なところから考えてみましょう。金は重いので、基本的には地球大気や海洋中では底に沈んでいきます。したがって、必然的に金を探すのは、地球の表面付近ということになります。

地表付近で豊富に存在する元素はケイ素や酸素です。平均的には地球表面では金の量は、ケイ素の2億分の1、鉄の2000万分の1程度です。ですので、実際には金はやみくもに探すのではなく、金の濃度が高い場所から集中的に採掘されます。金の採掘が行われる金鉱山では、地表平均の1000倍以上の濃度で金が存在しています。

太陽表面の元素組成

では次に地球とは性質の異なった天体、太陽の元素組成を考えていきましょう。

みなさんは太陽の元素組成をどのように測定するかご存知ですか?太陽では、地球のように岩石や大気を採取して元素組成を測ってあげることはできません。そこで活躍するのが「元素」と「光」の関係です。

元素はある特定の波長を持った光のみを吸収したり放出したりする性質があります。この時期の東京タワーのイルミネーション https://www.tokyotower.co.jp/lightup/index.php にも使われるナトリウムランプの色もこの性質に関係しています。

太陽の光を分解すると、元素が特定の光のみを吸収した痕跡、吸収線(下図の矢印)が無数に見られます。吸収の強さを測定することで、その吸収を引き起こした元素がどれだけ太陽にあるのか推測することができます。さまざまな吸収線を測ることで、これまでに太陽では60以上の元素について、その存在量が測定されています。

太陽に最も多く存在する元素は水素、次いでヘリウムであることが知られています。その他の元素は非常にわずかですが、多い順に酸素、炭素、ネオン、窒素、マグネシウム、ケイ素、鉄と続きます。金はというと、水素の1000億分の1、そして鉄やケイ素のおよそ400万分の1ほどです。

400万分の1と聞くとまだまだ少ないと感じますが、それでも最初に書いた地球の地表付近の平均と比べるとだいぶ金が多くなりました。これは太陽では表面で活発に対流が起こっているために金が内部に沈まないのに対し、地球では金などの重い元素は地球の中心部に沈んでいる傾向があるのが原因です。実は平均してみると地球表面で金を探すのはあまり効率がよくないんです。

宇宙でのゴールドラッシュ?

地球表面では金の量が少ない、太陽の一部を採取してくるのは不可能、それでは効率的に金を探すにはどうしたらいいのでしょうか?

まず思いつくのは、隕石や小惑星の採掘です。地球も含め太陽系のすべての天体は、太陽を作ったのと同じ分子雲(分子雲についてはさいさんの記事 https://jinshisai.github.io/blog/articles/20211114.html に詳しく書かれています)からできたので、もともと現在の太陽表面と同じ元素組成からスタートしたと考えられています。地球とは異なり、隕石や小惑星では金が沈むような場所もありません。小惑星までいって採掘を行えば、ケイ素や鉄に対し400万分の1程度の金を得ることが出来るでしょう。

もし、星間飛行が可能になれば、太陽系以外の星に行くのも手です。太陽の元素組成を測定したのと全く同じ方法で、遠くの星の元素組成を測ることができます。これまでに、宇宙には金などの元素は太陽と同程度含まれているのに、鉄やケイ素などの元素は太陽の数十分の1しか含まれていない星2が存在するということがわかっています。このような星では金の存在量はケイ素や鉄の10万分の1程度まであがります。こうした星の周りの惑星や小惑星の採掘を行うことができれば、大量の金を効率的に集めることができるかもしれませんね3

執筆者紹介

執筆:ムル

自己紹介 : オランダで星と天の川の銀河の研究をしています。日本の山々と星空が恋しいです。

この記事はAstro Advent Calendar 2021の企画記事です。

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