【Astro Advent Calendar12/9】星の「歌」を聴く(もやし)

音楽

目に見えるけれど手が届かない宇宙や星空。この世界には、それらに思いを馳せることで生まれた音楽がたくさんあります。今回はそんな「星空にまつわる音楽」を、クラシック曲にフォーカスして2つ紹介します。

管弦楽組曲「惑星」(グスターヴ・ホルスト)

歌劇や合唱曲を主に作曲してきたホルストさんですが、やっぱり一番有名なのは「惑星」。中でも「木星」は、中間部の旋律が日本語の歌詞をつけて歌われており、組曲の中でも最も知られています。(ちなみにホルストさんは「惑星」に関して、組曲の演奏順を変更したり、歌詞をつけるなどの改変を認めていなかったようです……。)

作曲当時、太陽系の惑星として知られていたのは、水星・金星・地球・火星・木星・土星・海王星・天王星(太陽系から近い順)。そのうちの地球を除いた7つの天体それぞれに曲が付けられています。一方、管弦楽組曲「惑星」は火星・金星・水星・木星・土星・海王星・天王星の順番で、一部順序が入れ替わっています(理由は諸説あるようですがここでは割愛します)。

ちなみに「冥王星」が入っていないのは、組曲の完成当時に発見されていなかったためです。冥王星の発見後、新たに組曲に「冥王星」を追加しようと作曲が行われたようですが、ホルストさんは完成半ばで倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。死後、弟子たちなどによって「冥王星」の続きが書かれており、「惑星(冥王星付き)」として演奏される場合もあります。

ちなみに「惑星」は大編成かつ特殊楽器(チェレスタや鐘、ハープ2台など)や女声合唱(海王星のみ)が入ることから、アマチュアのオーケストラで演奏されるのはまれです。木星や火星など人気のある曲だけを抜粋して演奏されることもあるようですが、そんなことをするとホルストさんが怒っちゃいそうですね。アマチュアオーケストラ民の端くれとしては全曲通しで一度、演奏してみたいものです。

トロンボーン協奏曲「オリオン・マシーン」(吉松隆)

続いて紹介するのは、日本人作曲家の吉松隆さん。NHK大河ドラマ「平清盛」の劇伴を担当されている方です。和風・キラキラな感じでゲームや映画音楽などが好きな方はハマると思います。※個人差があります。

そんな吉松さん、天体や星空にまつわる曲を多く出されています。

  • チェロ協奏曲「ケンタウルス・ユニット」
  • ソプラノ・サクソフォン協奏曲「アルビレオ・モード」
  • ピアノ曲 シリウスの伴星によせる Op.1
  • プレイアデス舞曲集

などです。聞いたことのある天体名が出てきて楽しいですね!

中でも私がすごいなと思ったのが、「トロンボーン協奏曲「オリオンマシーン」」です。

オリオン座の四ツ星と三ツ星をテーマにした5楽章構成で、曲には「ベテルギウス」「ベラトリウス」「リゲル」「サイフ」とオリオン座の星々の名前がついています。さらに、楽器編成は「オリオン座を模した配置」になっているとのこと。(wikipedia参照)一体どんな編成なんだ……。

演奏されることは非常にレア!ぜひ一度、聴いてみたい(演奏してみたい)ですね。

死にゆく星の声を聞く

ところで、星が放つ「光」を「音楽」にする試みが2014年に行われたのを知っていますか?

使われたのは南米チリにあるアルマ望遠鏡。宇宙にある天体からの微弱な電波をとらえ、星や惑星の進化や銀河の形成などの謎に迫るべく活躍しています。「ALMA MUSIC BOX 死にゆく星の旋律」は、そんな最先端の望遠鏡で観測した「ちょうこくしつ座R星」という星の観測データをオルゴール板に変換し、音楽にしたものです。

「ちょうこくしつ座R星」はちょうこくしつ座にある赤色巨星。アルマ望遠鏡を使った観測により、この星は周りに自らが放出したガスをまとっていることがわかっています。中心星の周りにらせん状の構造をしたガスが取り巻いているのもこの星の特徴です。

ちょうこくしつ座R星のアルマ望遠鏡による観測(c)ALMA

実際に「ちょうこくしつ座R星」の観測から生まれた曲を聞いてみましょう!どんな音がするでしょうか?

星々と私たちの間にある「星間空間」はほぼ真空です。そのため音を伝える物質がなく、星がもし「声」を出していたとしてもそれが私たちまで届けられることはありません。でも、もしも星が「歌って」いるのならこんな感じなのかな?と想像するとちょっとわくわくしてきます。そんな風に考えると、無機質なオルゴールの音もなんだか愛おしく感じてきませんか。

星に思いを馳せる

今回は星空モチーフの音楽と、実際の観測を音楽にするプロジェクトを紹介しました。星モチーフの音楽は他にもいっぱいあります(ニューイヤーコンサートで有名な「天体の音楽」やモーツァルトの「きらきら星変奏曲」など、紹介したい曲はいっぱいありました)が、またの機会にしましょう。

星空モチーフの音楽を聴きながら「どうしてこんな曲なんだろう?」と想像したり、星空をみながら好きな音楽を聞いてみたり。星空と音楽の楽しみ方は無限です。

ぜひ、好みの方法で、星空と音楽を楽しんでみてくださいね。

参考文献

執筆者紹介

執筆:もやし(Einstein’s Cross)

科学技術コミュニケータ。某アマチュアオーケストラでチェロを弾いたりしています。好きな作曲家はエルガーとブラームス。

この記事はAstro Advent Calendar 2021の企画記事です。

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