こんにちは、或いはこんばんは!おさむです。寒くなってきましたね、おさむだけに
やりたいコスプレがあります
我々の天文サークル・アインシュタインクロスは、主な活動として8月, 12月開催のコミックマーケットへの参加そして同人誌頒布をおこなっています。コミックマーケットは同人作品頒布だけでなく、企業出展や「コスプレ」も目玉のイベントとなっています。
本題ですが私には「やってみたいコスプレ」があります。どういうコスプレかというと……
① タライに
② 水を張って
③ 障子のある部屋にタライを置いて、水の中で……
④ 正座をする、というコスプレです。
まったく意味がわからないですよね。冬のコミケでこんなコスプレをすると確実に風邪以上の何かになります。やるならせめて夏だわ。
そもそも「どこが天文アドベントカレンダーやねん出直してこい」と言われかねないところですが、実はこれ、非常に天文学的に重要なエピソードのコスプレなのです。
……
時は江戸時代。大坂で廻船問屋を営む桑名屋徳蔵という男には妻がいました。当時の船というのは星を見て位置を把握し、航海していたそうです。夫が目印に船旅をしている「北極星」を見上げながら徳蔵の妻が夜なべして織物に励んでいると、一晩で北極星が動くことを見つけました。北極星は動かないはずのもの、もしこれが動くとならば、長旅の間には大きなずれが生じてしまいます。徳蔵の妻はこれを確かめるべく、次の晩にはタライに張った水の中に正座し、障子の隙間から北極星を見上げ続けました。水の中に座ったのは眠気がこないようにと言われています。その結果、やはり北極星は動いており、その動きは障子の桟一つ分であると突き止め、徳蔵に報告したとのことです。
……
伝承には様々なパターンがあるようですが、大まかにはこのようなものです。
このエピソードの美談チックな点はまた、非常に科学的に理にかなったものでもあります。
- 障子の隙間から見上げたこと …… 桟をものさしにすることで定量的な観測が可能
- 水の中に座ったこと …… 観測者を固定することで系を stable にし誤差を抑制
その効果がどれほどかはわかりませんが、とにかく、徳蔵の妻は天文観測の根本的なポイントを押さえています。徳蔵の妻、すげー。同じようにして北極星の動きを観測してみたくなります。
とはいえど、私は21世紀を生きるアストロボーイ。さすがに水の中で正座して身じろぎもせず一晩過ごすのはNGです。エコノミークラス症候群とか心配しちゃう。あとシンプルに家には北面の窓がないです。なんなら「コスプレしたい」は嘘かもしれません。
じゃあ、どうするの?
21世紀には21世紀なりの観測ができる。
そう、
手持ちのスマホならね。
こんな語り口をしておいて、実はまだ観測に着手していません。もし12月中に実施できたらその結果をご報告したいと思います。以下では「スマホを用いた北極星の動きの (なんちゃって) 観測可能性」を議論します。
まず手持ちのスマホを使うメリットはいくつかあって、「まず皆が持っているので誰でも再現可能」「人間はシャッター切るだけで、徳蔵の妻に申し訳ないくらいラク」「デジタルだから定量解析しやすい」「スマホを固定する必要があるが、そのようなデバイスが簡単に手に入る」などです。
スマホを設置しよう
まず重要なのがカメラをしっかりと固定することです。徳蔵の妻はタライと己の気力によって自分の目というカメラを固定しました。我々はスマホスタンドを使えばよいです。「スマホ 固定」とweb検索するとそういう商品がたくさん見つかりますし、1000円くらいあればかなり頑丈なホルダーが買えます。
カメラのスペックを知ろう
北極星 (ポラリス) は2等星で、東京の空からだとあまり明るい星とは言えませんが天気が良ければ見つけることができます。スマホで映るのかな?スマホアプリを使って露光時間を長くする必要があるかもしれません。カメラの感度については追って確認が必要です。
もう一つのポイントは解像度です。たとえば私が持っている iPhone 6s は 1200万画素 (4032×3024)、水平画角 62度なので、1度の動きはスマホで撮影した画像上60ピクセルほどの動きに対応します。実際のところ北極星は1度くらい動くので十分といえそうです。定量的な評価には角度のわかっているものを実際に撮影するなどして確認の必要があります。
最後に、スマホにおいて注意すべきことは自動補正機能です。スマホで撮影した画像は必ずと言っていいほどノイズ除去やレンジ調整といった前処理がなされます。したがって天文観測のRAWデータのように思ってはいけない…… ここでは「さすがに星の位置までは変わらない」だとか、大雑把に扱うほかないです。
あとは頑張ろう
一晩10時間、1時間おきくらいには観測したいですね。
おわりに
本日は「北極星が動くことを見つけ、それを定量した」という桑名屋徳蔵の妻の伝承を紹介しました。また、現代でもスマホを使えば同じ観測ができそうだよと申し上げました。
みなさまも暖かい季節になれば挑戦してみてはいかがでしょうか。それでは!
執筆者紹介
執筆:おさむ
URL:https://einstein-cross.com/
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