【Astro Advent Calendar 12/15】天文学の論文サイト「ads」でスーパーアースの研究の動向を勝手に解釈する

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こんにちは、うまです。

大学院を卒業してもう何年経ったことでしょう。天文学の論文を読むスキルなんて無くなってしまいました。うまはもともと読めたのか? それは聞かないでください。

落ち込む会社員のイラスト(女性)
論文が全然読めなくなって落ち込む社会人

このサークルのメンバーとも「たまに論文を読むなどしたいよね〜」と意識の高いことを言っていた時期もありました。

やはりもう論文サイトを見て「へ〜」とか言ってそれっぽい気分に浸るなんて不可能ですよね、今の私は以前にも増して怠惰ですからね、まあ無理ですよねえ〜〜。

と、気落ちしながらこのアドベントカレンダーのネタ探しのためにとある論文サイトを見ていたときのこと。

見つけてしまったのです、論文が読めなくても論文を楽しむことができる、超楽しい遊び方を。

論文読みを諦めるにはまだ早い!!!

というわけで、今日は論文を探すwebサイトの楽しみ方をご紹介します。

adsっていう有名サイトです

アドベントカレンダー7日目のこちらでは「アーカイヴ」というサイトのご紹介がありましたが、本記事でご紹介するのは天文に特化している「ads」と呼ばれるサイトです。adsはハーバード・スミソニアン天体物理学センターが運営し、NASAが協力しているすごいサイトです。

下記のURLがそのadsです。英語ですね。

NASA/ADS
A powerful, streamlined new Astrophysics Data System

基本の使い方

一応、基本の使い方も見てみましょう。論文のタイトルやアブストラクト(要約、あらすじみたいなもの)、執筆者とかで検索ができるみたいですね。

adsの最初の画面

ピンク色で囲った枠には検索したいワードを入れるようです。ページの下半分に例が書いてありますね。例えば「author」、すなわち著者名で検索をしたければ、検索窓に「author:”人の名前”」と入れれば良さそうです。

試しに、研究者と言ったら間違いなく例に上がる「アインシュタイン」の名前を入れてみましょう。ここでは苗字、名前の順に入れるようです。

アインシュタインの名前を入れてみます

どれどれ、結果はどうでしょう……

327件もヒットしました!

とはいえ、これは「筆頭著者」という絞り込みをしておりません。論文は複数人で執筆することが多いのですが、天文学ではその研究の第一人者が「筆頭著者」として論文執筆陣の先頭に名前が載ります。どうやら名前の順、天文学は一般に論文への貢献度順1であることが多いのですが、他のとある分野ではアルファベット順だという例も聞きました。そちらの方が平和で良いのかもしれませんね。

遊ぼう

細かい話は置いておいて、遊びます。

今回は「太陽系外惑星」という分野の論文を探してみます。

ちょうど例にあったので、full(論文全体から探してくれるっぽい)という指示で、「super Earth」という単語が入っている論文を探します。ちなみにスーパーアースとは天文学辞典によれば以下のような天体だそうです。

半径が2地球半径以下で1.25地球半径以上の小型の太陽系外惑星を指すことが多い。質量では、約10地球質量以下、約1地球質量以上に対応する。太陽系には存在しない種類の惑星であるが、地球型惑星の形成過程と惑星の軌道移動の関係の理解に繋がるとともに、惑星大気の有無や組成という観点から生命居住可能な惑星環境を議論する上でも重要な天体となっている。2021年現在で約980個のスーパーアースが報告されている。

https://astro-dic.jp/super-earth/

けんさくけんさく……

7,354件!!!

多すぎますね。ということで、右下の方にある①の何らかのスライドバーで西暦に条件をつけてみましょう。
太陽系外惑星が初めて発見されたのが1995年なので、それより前にこの単語は無さそうです。あったらごめんなさい。
というわけで何らかのバーに1995年から2010年くらいまで2とサクッと条件を入れてみます。

おつぎは右上の②の「Explore」を押し、

「Concept Cloud」という文字を押しましょう。

なんかでてきた!!!

ワードクラウド、と言うらしいです。

これは何かと言いますと、集計対象の中にどんな単語が入っているんですか〜というのを見やすくしたものです。文字の大きさ・濃さが「多さ」を表しています。

今回だと「planet」と言う単語がめちゃくちゃ多く、「earth」や「super」もまあ同じくらい多いのかなという印象ですね。「super Earth」を含む論文を検索しているのですから、それはそうです。

単語の表示ルールを変えて見てみる

ところで、よく見ると

uniqueとfrequentというバー

左側にまたもやこのような「何らかのスライドバー」があります。

こちら、左側の「Unique」寄りにすると、「他の論文と比べてこれらの論文に出現しやすい単語」にフォーカスしてくれます。たとえば観測を表す「observation」なんかはどの分野でもおそらく多く出現しますよね。そういった「天文学の分野なら当たり前の単語」の戦闘力を削いで、「この分野に特有の単語」の戦闘力にバフをかけてくれると言うわけです。

では右側の「Frequent」に寄せるとどうなるかと言うと、これは「他の論文での出現頻度に関わらず、今回の検索結果の論文で多く出てくる単語」を素直に出すようです。

実際にスライドバーを動かしたパターンを見てみましょう。

なんだかあんまりパッとしませんね。。。。

左側は珍しさに重きを置きすぎて、ほんとに意味あるの?みたいな単語も出てきていますね。mean、knowやpaperはなぜ除外されていないのかちょっと気になります。とはいえ「interior」は内部構造の話をするのかなと言う気がしますし、「tidal」については系外惑星でよく議論になる「潮汐」のことですので、その辺りは違和感はないかもしれません。よくよくみてみると「likely」や「important」などが強めなのは、まだあまり素性のわかっていないスーパーアースについて確定的な観測の結果の論文が少ないなどの理由があったりするのかもしれませんね(かなり憶測を言っております)。

一方で右側は非常に納得感があります。よく出てきそうな単語が大量ですね。

時期の違う論文から傾向を探ろう

つぎは、同じ検索内容で時期を変えてみましょう。

先ほどが1995年〜2010年でしたので、2011年〜2020年を取得して二つのワードクラウドを並べてみました。

スライドバーは真ん中にしました。

かなり主観で色付けをしていますが、傾向が見えて面白い気がしています。

まず結論ですが、この図からは、20年でスーパーアースの研究はかなり具体的な内容に迫ってきたと言えるのではないでしょうか? 根拠となる着目点を二つ挙げてみました。

  • 着目する点1:大気の研究が進んだ
    • 右側の図に黄色で記したように「atmosphere」「asmospheric」のような大気を表す単語が2011年以降の論文では出てきています。これは観測技術が進んだり知見が溜まったりして、スーパーアースの大気に関する研究が進んでいるということでしょう。
  • 着目する点2:具体的な解析をしていそう
    • 同様に右側の赤色で示したところと、左の緑で示したところを比べてみます。2010年まではなんとなーく「フワッとした」話題が多そうに見えてしまいます(possibleなんかは「こんなこともできるだろう」的な文脈で使われそうな気がしたり)。一方、右側のほうはパラメータ、analysis(解析)、モデル、determine(決定する)など、かなり具体的にデータ解析を進めているのでは?と思われる単語のサイズが大きくなっています。orbit(軌道)なんかも具体的ですね。

こういった点に着目すると、論文中に使われている単語の変化というデータから、「20年ほどの時を経てスーパーアースに関する研究が具体化してきたっぽい」ことが言えるかもしれませんね。

…と書きましたが素人が思ったことを言っているだけなので、「そうかもね〜」くらいに思っていただければと思います。(とはいえそんなに間違ってもいないような感じもあります。)

おわりに

今回はスーパーアースだけに注目しましたが、例えば「スーパーアース」と「遠方銀河」のように別の分野で比較をしてみるのも面白いかもしれません。きっと用いる手法や着目する物理現象の差が見えてくることでしょう。

お読みいただき、ありがとうございました。天文アドベントカレンダーも折り返しを過ぎました。残りも良かったらお楽しみくださいね。

それでは、さようなら!

執筆者紹介

執筆:うま(うまうま と名乗っていたのか うま と名乗っていたのか忘れ気味)

URL:https://einstein-cross.com/

この記事はAstro Advent Calendar 2022の企画記事です

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