【Astro Advent Calender2022 12/8】宇宙の壮大さを夜空から実感する(ムル)

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みなさんは雲も月明かりもない夜に、周りに何もない真っ暗な場所で夜空を見上げて、宇宙の広さを感じたことはありますか?空一面に広がる星々と天の川によって作られた星空は、私たちに宇宙の壮大さを実感させてくれます。

今回の記事では、宇宙の壮大さを最新の観測データをもとに紹介していきます!

使用するデータは、宇宙望遠鏡ガイア衛星によって取得された最新のデータを使っていきます (*1)。

星の明るさと位置、距離や速度を測るのが主な目的という非常にシンプルなミッションですが、このガイア衛星による観測によって天の川銀河の三次元の地図が出来上がりつつあります。

肉眼で見た天の川はもやもやとしていますが、双眼鏡で見れば星の集まりであることがわかりますよね。それでは、双眼鏡などを使ってひとつひとつの星の明るさを記録していけば、その記録から天の川の明るさを再現できるのでしょうか?ガイア衛星のデータを使って確認してみましょう。

こちらの図はガイア衛星によって記録された星の明るさを元に再現した星空です。どうでしょう?写真みたいでしょう?

ガイア衛星では双眼鏡よりも暗い星まで記録しているので、ひとつひとつの星の記録から正確に目で見た天の川を再現することが出来るのです。

では今度はガイア衛星によって測られた星までの距離を使って、いろいろな距離までの宇宙の明るさを調べてみたいと思いますが、その前に簡単に一等星を使って距離の感覚をつかんでおきましょう。

肉眼で見える地球から最も近い星はケンタウルス座α星(*2)で、距離はおよそ4.4光年です。一方で最も遠い一等星ははくちょう座のデネブでその距離なんと2600光年です。その次に遠い一等星がオリオン座のリゲルで860光年程度なので、いかにデネブが遠いか、そして遠いにも関わらず明るく見えるかがわかります。

まずはリゲルぐらいの距離、1000光年以内にある星の明るさの分布を見てみましょう。

ほとんど何も見えませんね…?天の川の星のほとんどはもっと遠くにあるようです。

1000光年と聞くと非常に大きな距離に聞こえますが、実は私たちが見ている天の川の光の多くはもっと遠くの星から来ているのです。

それでは次にデネブと同じぐらいの距離まで移動してみましょう。

うっすらと天の川が見てきました。これでも最初に見た天の川の姿には程遠いですね。

一気に距離を伸ばして1万光年までの宇宙を見通してみます。

ようやく天の川の姿がはっきり見えてきました。意外と天の川は遠いんですね。

これまで見てきたいろいろな距離までの星空の姿をまとめてみます。下の図ではそれぞれの場所ごとに、私たちの見ている星空の光の半分が来る距離を表しています。赤ければその場所の光は近くの星からの光でしめられていて、青ければ遠くの星からほとんどの光を得ているということになります。

天の川の中心近くではかなり遠くの星からの光るが重要だというのがわかりますね。また、この図と天の川の写真を比べると、この図で青くなっている場所は実際の天の川で明るく見える場所というのがわかります。天の川の明るい場所は、より遠くの星まで見えて、見える星の数も多いので明るく見えるというわけです。

この理屈を天の川銀河の構造を考えて理解してみましょう。

(出典) 左: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC/Caltech) 右: Stefan Payne-Wardenaar / MPIA

1の方向だと薄い天の川銀河の円盤を垂直に見るので見える星の数が少なく、夜空では天の川の外ということになります。

2の方向を見れば天の川銀河の円盤に沿って見るので、見る星の数が増えて「夜空に天の川」が見えます。

3の方向は銀河の中心方向を見通すので、最もたくさんの星をみることができます。この方向が射手座の方向で、天の川の中で最も明るく見える方向です。

だいたい天の川銀河の円盤の厚みが1000から2000光年程度なので、この距離を見ている間は天の川が浮かび上がってきません。遠くを見に行くにつれ天の川が浮かび上がってくるというからくりです。

どうでしょうか?今回の記事を通じて、より具体的に夜空の天の川から宇宙の壮大さを実感していただけたでしょうか?

ぜひ、1万光年先の光を見ているんだなぁなどと思いながら夜空の天の川をご覧になってください。

執筆者紹介

執筆:ムル

自己紹介 : オランダで星と天の川の銀河の研究をしています。日本の山々と星空が恋しいです。

この記事はAstro Advent Calendar 2022の企画記事です。

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